バラスト水処理装置関連銘柄

「船舶バラスト水規制管理条約」が1年後に発効決定

ballast

2004年に国際海事機関において採択された「2004年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」が2017年の9月8日に発効されることが決まった。

この条約発効により、外航船は発効後5年以内にバラスト水処理装置の設置が義務となる。発効前の2016年から、発効後5年以内となる2022年9月まではバラスト水処理装置の需要ピークが予想される。

この条約発効決定により、バラスト水処理装置関連銘柄への注目が集まっている。

バラスト水処理関連銘柄一覧

コード 銘柄名 企業情報・業務内容
6322 タクミナ バラスト水処理装置のうち、薬液注入方式の処理装置に同社のスムーズフローポンプが用いられている。同社のスムーズフローポンプには「ムラのない薬液注入」「注入量の細かい制御」「配管のコンパクト化」「耐久性、メンテナンス性が高い」といった特徴があり、バラスト処理装置としてのニーズが高い。
7018 内海造船 バラスト水処理装置を就航船へ設置する為の造船設備を備える。船舶バラスト水規制管理条約が発効される2017年に向け、バラスと処理装置未設置船への需要取り込みを狙う。
6005 三浦工業 フィルタと紫外線による殺菌を組み合わせた処理機「バラスト水処理装置HK」を販売。設置スペースを抑えつつも微生物の殺菌処理能力に優れており、操作もタッチパネルで簡単に行うことができる。
6637 寺崎電気産業 船舶用システム製品を扱っており、バラスト水処理装置など環境に配慮したシステムも手掛ける。また、アメリカに船舶メンテナンスを行う孫会社「RATEC INC.」を設立し、海外でのバラスト水処理装置 の設置、メンテナンス需要にも備える。
6237 イワキポンプ 船舶バラスト水処理装置のうち、薬液注入方式の処理装置に同社の定量ポンプが用いられている。薬液の吸い込みと吐き出しを細かい調整の元で行うことができる。
6467 ニチダイ 船舶用バラスト水処理装置用の大型海水ストレーナーの生産を行う。この分野の需要は横ばいとなっていたが今回の船舶バラスト水規制管理条約発効が大幅な需要増を引き起こす可能性も。
7003 三井造船 オゾン利用によるバラスト水処理システムの開発で日本政府の適合証明書を取得済み。同証明書を取得した同年には「バラスト水事業グループ」も新設しており、バラスト水処理装置の需要取り込みに力を入れている。
6331 三菱化工機 バラスト水処理装置「三菱-VOSシステムシリーズ」の生産を行う。このシリーズはバラスト水排出基準(D-2)を満たす装置として、型式承認を世界で初めて取得した装置となっている。
6370 栗田工業 同社が開発したバラスト水処理システムは国際海事機関(IMO)の最終承認を取得している。同社のバラスト水処理システムはバラスト水をフィルターろ過せずに薬剤のみで殺滅処理(バラスト工程)、中和処理(デバラスト工程)するものであり、規制の更なる強化にも対応可能な方法となる。
5411 JFEホールディングス 子会社のJFEエンジニアリングが開発した船舶用バラスト水管理システム「JFEバラストエース」はフィルター処理+薬剤注入方式を採用している。国際海事機関(IMO)の最終承認も取得済みとなっており、世界中に薬剤の供給拠点を設置し国外の需要取り込みも狙う。

バラスト水処理関連銘柄の本命(7018)内海造船

時価総額50億円弱の造船企業でありながらバラスト水処理装置設置へ取り組みを当初から行っている。同業である(7003)三井造船もバラスト水処理装置設置には力を入れているが時価総額が2桁も違っており、業績へ与えるインパクトが変わってくるのは当然と言えるだろう。バラスト水処理関連銘柄の中でも中小型株は特にの恩恵が大きいと言われる。

バラスト水処理関連銘柄の大穴(6322)タクミナ

バラスト水処理装置のポンプ部分の生産を行う。船舶バラスト水規制管理条約の発効によりバラスト水処理装置の需要が拡大してくるのは必然であるが、ポンプ需要が同社一社に集約するかどうかは微妙なところだろう。しかし、こちらも(7018)内海造船同様に時価総額から見れば業績へ与える好影響が期待できる。

バラスト水処理関連銘柄の出遅れ(6370)栗田工業

総合水処理の最大手企業。バラスト水処理装置関連銘柄の本命となってもおかしくはないが現時点で株価への影響は限定的。国内船舶だけでなく海外からの需要も期待できる。

バラスト水管理条約とは

バラスト水処理装置関連銘柄が注目を集めるきっかけとなった「バラスト水管理条約」とは何か。順を追って説明していく。

バラスト水とは

バラスト水とは、船舶の荷物が空の状態でもバランスを崩さないように重りとして予め積んでおく海水を指す。

出航時の海域で取水されたバラスト水は、積荷を行う海域で排水される。バラスト水には魚介類やプランクトンなどの海洋生物も含まれており、これが本来ならば存在しない海域に放流されることで生態系を破壊する事例が報告されてきた。

バラスト水の排水が漁業活動にも悪影響を及ぼすということで排水の浄化を求める声が高まった。

2004年に「バラスト水管理条約」採択

バラスト水が環境へ与える影響を軽減する為、2004年に国際海事機関(IMO)が船舶にバラスト水処理装置の設置を義務付ける「バラスト水管理条約」を採択。この条約に30カ国以上が批准し、更に批准国の合計船腹量が全体の35%以上となった日から1年後が条約の発効日と決まった。

バラスト水管理条約の採択から12年、発効条件が遂に整い2016年の9月8日の1年後、2017年9月8日に条約が発効される。批准国の船舶はこの条約発効から5年以内にバラスト水処理装置の設置を行わなければならない。

バラスト水処理装置設置需要は3兆円市場

バラスト水処理装置設置による市場規模は年間5,000億円を超えると言われている。これが今後6年(発効前1年、発効後5年)に渡って続くとなれば、3兆円を超える市場規模になってくるだろう。

勿論、発効後5年を過ぎても定期メンテナンスや新たに造船する船舶への設置も義務化されていることから継続的なバラスト水処理装置需要が見込まれる。

日本の造船関連企業は環境配慮への取り組みに当初から力を入れてきたということもあり、この分野では世界をリードしているとも言われている。国内だけでなく海外の需要取り込みも期待されており、バラスト水処理装置関連銘柄の継続的な業績拡大が見込まれる。

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