ロシアゲートショックの可能性
ロシアゲートはトランプラリー終焉の要因となるのか
2017年5月9日、トランプ大統領がFBIのコミー長官を突如解任した。コミー元長官はロシアによる米大統領選挙介入疑惑を捜査していたと言われ、トランプ政権が司法妨害を企てたのではないかと問題視されている。
一連の流れを米メディアは「第2のウォーターゲート事件」、またそれに例えて「ロシアゲート」と呼んでいる。
この記事を執筆している5月21日段階では、ロシアゲートは単なる疑惑にすぎない。また、トランプ政権側もコミー元長官の解任は捜査の妨害を意図したものではないと否定している。
しかし、今後コミー元長官の証人喚問やトランプ大統領とのやり取りを示した文書などが出てくればロシアゲート「疑惑」がロシアゲート「事件」へと発展し、それが市場にロシアゲート「ショック」を誘発する可能性もありうる。万が一、ロシアゲートショックまで至ってしまえばトランプラリー終焉という事態も想定しなければならない。
問題が深刻化し、このロシアゲート疑惑がロシアゲートショックまで発展してしまう可能性がどれ程なのかを考察してみた。
目次
ウォーターゲート事件とは
まずはロシアゲートという言葉の元となったウォーターゲート事件について説明しておこう。
ウォーターゲート事件とは、1972年に問題が発覚し、翌々年の1974年にリチャード・ニクソン大統領が辞任に至るまでの経過を総称してこう呼ばれている。
1972年の大統領選挙戦中にニクソン共和党政権と対立していた野党民主党本部があるウォータゲート・ビルに何者かが盗聴器をしかけようとしたことで事件が発覚。捜査が進む中で、この犯人グループはニクソン大統領側の人物であることが露呈していき、政権内部がこの盗聴に深く関与していたことで事態は更に深刻化する。更には事件発覚時の捜査妨害やもみ消し行為にもホワイトハウスが直接関わり、ニクソン大統領自身もそれを把握していたということで世論の反感を買うことに。結局、大統領弾劾の動きが強まったため、ニクソン大統領は任期途中で辞任に追い込まれた。
事件発覚の現場となった場所がウォーターゲート・ビルだったため、ウォーターゲート事件と呼ばれている。
ウォーターゲート事件とロシアゲートにはいくつかの共通点があるが、その最たる部分として、政権vsFBIという構図が挙げられる。
ロシアゲートはトランプ大統領によるコミー長官の解任がきっかけであり、ホワイトハウス側とFBIの対立姿勢が見てとれる。ウォーターゲート事件もメディアへ情報リークを行っていた人物、いわゆる「ディープ・スロート」がFBI副長官だったことが後に判明している。
ロシアゲートの現状、そして今後の進展予想
ロシアゲートの現状、そして今後の進展を予想する。まずは時系列順に状況をまとめてみた。
米大統領選、FBIコミー長官のクリントン氏に対する捜査の影響
米大統領戦直前にFBIのコミー長官がヒラリー・クリントン氏に対して行ったメール問題捜査は選挙結果に少なからず影響を与えたと言われている。敗北したクリントン氏、そして民主党側はこの捜査が結果を左右したと主張。
結果だけを見れば、FBIとコミー長官の行動がトランプ大統領誕生の一因とも捉えることができ、この時点でトランプ政権とFBIは良好な関係だったと言えなくもない。
ただ、この時FBIはクリントン氏のメール問題と平行し、ロシアのサイバー攻撃による米大統領戦への介入疑惑も捜査していた模様。あくまでも中立な立場だったと見られる。
トランプ政権の要、マイケル・フリン大統領補佐官が突如辞任
トランプ政権発足後の2月13日、大統領補佐官のマイケル・フリン氏が突如辞任を発表。フリン氏はロシアと親交があり、オバマ政権で冷え込んでしまった米露関係を修復してくれるのではないかと期待されていた。しかし、その手腕を発揮することはなく、政権発足前にロシア当局と独断で対露制裁について協議した疑惑が浮上し政権を去ることとなる。
後に発覚したことではあるが、この時点でフリン氏はロシアによる米大統領戦介入疑惑の捜査対象となっていた模様。トランプ大統領はフリン氏辞任の翌日、FBIのコミー長官に対してフリン氏に対する捜査を中止するよう要請していたという。現段階ではあくまでも疑惑に留まってはいるが、これが事実であれば司法妨害と受け止められる可能性は非常に高い。
トランプ大統領がコミー長官を突如解任
5月9日、トランプ大統領はFBIのコミー長官を突如解任した。その理由として、コミー長官がクリントン氏に対するメール問題捜査を独自判断で終了させたことで司法長官から解任勧告があり、それに従っただけとしている。解任理由はあくまでも司法長官主導であり、政権主導ではないことをアピールした。しかし、その後のテレビ発言で勧告は関係なく、元々解任するつもりだったとし、理由が一貫していない点も疑問視されている。
この解任劇に疑惑を持った米メディアと野党民主党が本当の理由が他にあるのではないかと指摘。それがロシアによる米大統領戦への介入疑惑であり、捜査の対象がトランプ政権に及んでいることを妨害するためだったと主張している。
ここまでがウォーターゲート事件に例えて「ロシアゲート」と言われるに至った経緯となる。
トランプ大統領が自身や政権に対して行われている(もしくは今後行われるであろう)捜査を妨害したとなればそれは明らかな司法妨害であり、弾劾に値する理由となる。今後はその立証が焦点となってくるだろう。
トランプ大統領によるロシアへの機密情報漏えいも発覚
FBIのコミー長官解任の翌日10日、トランプ大統領がホワイトハウスでロシアのラブロフ外相らと会談した際、IS(イスラム国)掃討作戦に関する機密情報を明かしたと米メディアは報じている。
トランプ大統領はツイッターでこの件について肯定しており、ロシアとの情報共有の重要性や立場的にも機密情報を扱って問題ないはずとの認識を示している。
機密情報の情報元であるイスラエルとの関係悪化や情報漏えいに関しての違法性はすぐに判断できない部分ではあるが、ロシアゲートという疑惑が浮上している中でこういった動きを取ってしまったことでロシアとの関係・疑惑が更に深まっている。
メディア、民主党、そしてFBIもより一層、トランプ政権に対し、ロシアゲートの疑惑を深く追求してくる可能性が強まった。
ロシアゲートの進展予想。今後のXデーはいつか
今後、ロシアゲートはどのように進展していくのか。そして今後5月後半において注意しておくべきXデーはいつになるのかを調べてみた。
まずは5月24日、この日までに米上院司法委員会はホワイトハウスとFBIに対し、コミー元長官とトランプ大統領のやり取りに関する書類の提出を求めている。トランプ大統領は外遊中のため不在ではあるが、ロシアゲートに関して大きな進展があるかもしれない。
そして5月末ごろ、トランプ大統領も外遊から戻ってきた頃に、コミー元長官の証人喚問が予定されている。ここで政権側による司法妨害が明言されてしまえばトランプ大統領弾劾の可能性が一気に高まる。
ロシアゲートが市場に与える影響
現時点でそのの可能性はまだ低いが、最悪の事態となりトランプ大統領の弾劾、もしくは辞任となればネガティブサプライズであり、市場にとって悪影響となりうる。
現に17日のニューヨーク市場、翌日18日の東京市場ではロシアゲートによる政権スキャンダルが下げ要因となり、日米共にリスクオフの大幅安となった。
その後、トランプ大統領の外遊がスタートしたことで問題が一旦棚上げとなり、懸念が後退。しかし、完全解決に至っていないことを考えれば再度リスクオフの展開が訪れると予想される。
5月21日時点でロシアゲートショックと呼ばれる程の大きな動きはないが、状況の進展次第では今後そういった事態も起こりうるだろう。
問題が長期化すれば政策の足止め要因にも
トランプ政権による司法妨害が立証されなかったとしても、問題が長期化すれば政策実現の足止めにもなりかねない。
ただでさえ、トランプ政権はオバマケア代替法案の提出に失敗しており、政策実行力に疑問符が出始めている。
ロシアゲートが長期化すれば与党である共和党内からの支持も低下し、政策実行能力の更なる衰えが懸念される。
トランプラリーの要因はトランプ大統領の人柄ではなく、あくまでも政策期待の部分が大きい。減税政策、インフラ投資、規制緩和といった市場へのポジティブ要因が後退してしまえば、それだけでトランプラリー終焉となってしまう恐れがある。
トランプ大統領辞任でも短期決着ならばポジティブ材料か
万が一、ロシアゲートが深刻化しトランプ大統領が辞任に至ったとしても、それが短期決着であればポジティブ材料と捉えられる可能性もある。
前述した通り、トランプラリーの要因は政策そのものにあり、トランプ大統領が辞任したとしても、その政策を大統領代行となるペンス副大統領が引き継げば問題ないと捉えられるかもしれない。
勿論、アメリカ大統領が任期途中で辞任するというのは非常に大きな材料ではあるが、トランプ大統領の今の支持率を見れば、辞めることが好材料となる可能性も十分に考えられる。
ロシアゲートショック発生の確率はどれ程か
5月19日のニューヨーク市場を見る限り、ロシアゲートに対する懸念は後退しており、この時点で相場が暴落する可能性は低いと判断されている。
ただ、イギリスのブックメーカー(賭け業者)ではトランプ大統領弾劾の可能性が30%前後で推移しており、5割は下回っているものの、決して低くはない数字となっている。
今後、ロシアゲートがどのように進展していくか、完全に読み切るのは難しいが、現時点で多少なりともトランプ大統領が辞任に至る可能性があることは頭に入れておいた方がいいだろう。
ロシアゲートの進捗状況に関しては記事の追加で対応予定。
タグ:トラポノミクス, トランプラリー, トランプ大統領, ロシアゲート, ロシアゲートショック
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